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GATE

09

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Rii

『My Path』

冬、私は一人で旅に出た。
ずっと同じ場所に居続けて、自分と世界の境界があいまいになって、自分の形を保てなくなった気がしたから。
知らない街に一人で飛び込んで、知らない道をゆっくり歩いてみる。
頬を撫でる風の冷たさ、どこかで鳴っている教会の鐘の音、すれ違う人々から香る柔軟剤のにおい、刻々と変化する陽の光と影の美しさ……初めて感じる外界のさまざまな刺激は、知らない街に自分一人だけを取り残して、自分の内側と向き合わせてくれる。その感覚にしばらく身を預けていると、段々とあいまいになっていた自分自身の輪郭がはっきりしてくることに気が付いた。
普段は無意識にも、勝手に他人と比べて、いらない情報がどんどん入ってきて、自身への評価や将来への不安に追われていた。なんとなく周りに合わせているような、そうしなければいけないような気がして、自分の意志がなかった。旅によって自分をちょっとだけ世界から隔離することで、私は私自身の内側の存在に気付いて、形を取り戻し始めた。
自分がやりたいこと、自分らしくいること…そうか、もっと自由になっていいんだな。自然とそう思えた。
でも、時間は過ぎていく。自分が愛おしいと思った瞬間も、すぐに過去へと流れていってしまう。
この旅が終わった後も、光差した道が消えないように。自分の気持ちに気付けた瞬間を思い出せるように。私は知らない街でシャッターを切り続けた。
 
今回展示した3枚の写真は、今年2月に一人で訪れたフィンランド・ヘルシンキでの写真です。初めて見る街中のなんでもない瞬間に自分の心は動かされ、無心で写真を撮っていました。自分が好きな写真には、必ずその土地の人々が写っており、そして光だけでなく長く伸びる影にも意識をして撮影していることに気付きました。今では人々の影に自分自身の形・内面にある意志を投影しているのかなと考えています。光差す方向が私が歩んでいきたい道だと信じて。
初めての旅先で見た景色が、皆様にも届きますように。

​卒展を終えて

amu関係者だけでなく、多くの方にご来場いただき嬉しかったです。
キラキラした写真が多い中、私の作品は自分の内面も少し見せるような、心情も合わせた作品だったので、気に入ってくださる方がいるのか少し不安な点もありましたが、これが好き!と言ってくれる方がいて、直接お話することもできて、自分の自信につながりました。ありがとうございました!

 

amu design 写真教室

第30期生 卒業制作展 『TRANSIT』

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